朝倉未来のジャブを分析してみた

前回は井上尚弥選手のジャブについてまとめてみました。今回はRIZINで活躍中の総合格闘家・朝倉未来選手のジャブの特徴を理学療法士の観点から分析していきたいと思います。

朝倉未来のジャブを分析

基礎的な知識としてボクシングと総合格闘技では打撃のフォームに違いがあることを理解してもらいたいです。ボクシングはパンチだけの攻防のため蹴りやタックルを想定しません。グローブも大きいのでブロッキングも多く多用します。総合格闘技ではパンチからの蹴りやタックルのコンビネーションがあるので、ボクシング以上に上下左右に動く必要があります。他にも細かい違いはありますが今回は説明を省かせてもいます。

立ち姿勢・準備期


ボクシングと違い蹴りやタックルがあるので足幅のスタンスが狭いです。骨盤は前後傾中間位で脊柱は垂直に保持しています。そのため、身体の重心軸はやや前方ですがほぼ中心にあり前後左右の移動に反応できる状態です。前回の井上選手は後の膝は屈曲していましたが、朝倉選手は左膝が伸展しています。

重心移動の開始


右足部の踵が浮いた瞬間です。重心軸が中心から前方に移動したためです。左膝関節は最初の構えから伸展していたため、骨盤を右側方に傾けて移動しています。体幹の側屈はまだ確認されません。
右足部が接地するタイミングです。1枚目のスタンスから少し拡がり前方へ重心が移動しました。左膝関節は伸展した状態なので上下高さの重心移動はあまりみられません。この時の朝倉選手は骨盤の右回旋で距離を拡げています。そして接地のタイミングで右膝関節を屈曲させて重心の高さを調整しています。
右足部は接地して肘を伸ばし始めるタイミングです。3枚目より骨盤の左回旋とそれに伴う体幹の左回旋が確認できます。右肩・右肘が上がり初めています。

上半身の移動開始〜ジャブ完成形


いよいよジャブを当てに行くタイミングです。先程まで浮いていた右踵が床についています。それに伴い右膝が伸展して骨盤回旋しています。スタンスはかなり拡がりました。左膝は3枚目から最大に伸展していたので骨盤の可動が主にスタンスを拡げています。また、体幹部が右側方に移動して、肩甲骨が外転に伴い肘の伸展が生じています。
ここでジャブの完成形になります。体幹の側方から肩甲骨外転・肘伸展の可動域を最大限確保してリーチを確保しています。

ジャブ〜立ち姿勢への移行


ここからは、元のスタンスに戻していくタイミングです。朝倉選手の特徴としてジャブを打った後は必ず右に回ります。右足を軸に骨盤・体幹を左に回旋させて左足を移動させます。6枚目と右足部の方向が変化しているのが確認できます。
左足部が浮いて移動しているタイミングです。体幹部が左に移動し、それに伴い肩甲骨の内転と肘屈曲が生じています。インパクトの時と比較すると重心が中心に戻ってきています。
左足部が接地してします。上半身が床に対して垂直に保持され重心軸が中心に戻っています。
完全に元の状態に戻りました。9枚目の着地から左足部が外線位で接地されて、膝も伸展位に戻りました。1枚目同様に前後左右に動ける位置です。

以上が朝倉選手vs牛久選手で行われたジャブの特徴です。競技的な特徴としてはボクシングと違いパンチからの繋げが重要なので立ち姿勢のスタンスは狭いです。ローキックやタックルの対応がある為、前側の下肢が極端に内側に入っていません。その為、井上選手と異なり大きな踏み込みでのジャブではなく半歩踏み込んだジャブを多用していました。他にも競技的な特徴はあるけれど、今回は運動学・解剖学的な観点からの分析なので説明は省きます。

朝倉未来のジャブまとめ

このワンシーンでの朝倉選手のジャブにおける身体的な特徴として

①立ち姿勢で軸足(左足)の膝関節は伸展位・上半身は床から垂直
②軸足を床に残したまま前方へ体重移動・前足の移動距離が少ない
③骨盤〜体幹を右回旋させてジャブの距離を確保する
④打ち終わりに骨盤〜体幹の左回旋を利用して左足部を移動させる

以上4点が身体的特徴として気になる点でした。井上選手は膝関節の屈曲・伸展を活用し前後の踏み込みで強烈なジャブを作っていましたが、朝倉選手は骨盤・体幹の回旋をより活用してジャブを打ち出していました。その為重心の大きな移動が少ないため回転運動を生み出しやすいです。パンチからの蹴りなどを考えると効率良い身体の使い方だと思いました。あくまでもこのワンシーンでの分析なのでその点はご理解ください。

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