MMA選手のパフォーマンス向上に関する学術的考察

研究の背景

総合格闘技(MMA)は、高強度の打撃、テイクダウン、グラウンドコンバットを含む極めて多様な身体能力を要求するスポーツである。そのため、競技パフォーマンスを最大限に引き出すためには、適切なストレングス&コンディショニング(S&C)トレーニングが不可欠である。本研究は、MMA選手のパフォーマンス向上における高強度・低ボリュームの特異的S&Cトレーニングの有効性を検証した。

研究デザイン

本研究は、ギリシャで行われた2018年の実験研究であり、以下の条件で実施された。

対象者

  • 国内プロMMA選手17名(トレーニング歴3年以上、試合経験あり)
  • 平均年齢:STG群 28.9 ± 4.2歳、RTG群 25.7 ± 5.0歳
  • 身長:STG群 181 ± 4 cm、RTG群 175 ± 5 cm
  • 体重:STG群 91.8 ± 7.3 kg、RTG群 90.9 ± 6.5 kg

試験期間:4週間 頻度:週3回のS&Cトレーニング+技術練習 群分け

  • 特異的トレーニング群(STG):MMA競技に特化した高強度・低ボリュームトレーニング
  • 通常トレーニング群(RTG):従来のサーキット型トレーニング

トレーニング内容(STG)

筋力向上プログラム(1RMの80-95%):

  • スクワット
  • ベンチプレス
  • デッドリフト

パワー向上エクササイズ

  • カウンタームーブメントジャンプ(CMJ)
  • メディシンボール投げ

有酸素トレーニング

  • HIIT(60秒スプリント×5~6セット)
  • ローイングエルゴメーター

スピードトレーニング

  • 加重スプリント
  • シャトルスプリント

結果(STG群の改善率)

📈 筋力向上

  • ベンチプレス:+16.1%
  • スクワット:+19.5%
  • デッドリフト:+20.1%

スピード向上

  • 10mスプリント:-3.7%(短縮)
  • 2mテイクダウンスプリント:-22%(短縮)

🫁 有酸素性体力

  • VO2max:+13.3%

通常トレーニング(RTG)との比較

  • RTGでは有意なパフォーマンス向上は見られず、STGの方が明確な改善を示した。
  • 特異的な高強度トレーニングが、MMA競技に適した筋力・スピード・体力向上に有効であることが示唆された。

考察とポイント

  • 試合に即した動きを重視するトレーニングが効果的
  • 高強度・低ボリュームのS&Cが短期間で成果を出せる
  • 従来のサーキット型トレーニングだけでは十分なパフォーマンス向上は難しい
  • 試合時期に応じた計画的なトレーニング設計が必要

まとめ

MMA選手がより短期間でパフォーマンスを向上させるには、特異的な高強度・低ボリュームのトレーニングが重要である。科学的根拠に基づいたS&Cトレーニングを取り入れることで、競技力の向上が期待できる。

参考文献

  1. Kostikiadis, I. N., Metaxas, T. I., Tsoukos, A., Veligekas, P., Terzis, G., & Bogdanis, G. C. (2018). “Short-term sports-specific strength and conditioning training improves performance in well-trained mixed martial arts athletes.” Journal of Sports Science and Medicine, 17(3), 348-358.
  2. James, L. P., Robertson, S., Haff, G. G., & Kelly, V. G. (2016). “Strength and conditioning for MMA: A systematic review.” Strength and Conditioning Journal, 38(2), 44-52.
  3. Lenetsky, S., & Harris, N. K. (2012). “The mixed martial arts athlete: A physiological profile and training recommendations.” Strength and Conditioning Journal, 34(1), 32-47.
  4. Amtmann, J. A. (2004). “Self-reported training methods of mixed martial artists at a regional gym.” Journal of Strength and Conditioning Research, 18(1), 194-196.

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