格闘技選手の精神面について考察してみた

スポーツ選手は身体的側面だけでなく、精神的要素も試合に勝つ為には重要です。特に格闘技などコンタクトスポーツでは、打撃・投げ技・極め技など他の競技と比べ怪我のリスクが高く、他の競技と比べても精神的要素が重要になるケースが多いです。今回は格闘技選手を対象とした精神的特性に関する研究を発見したので筆者の考察も含めてまとめてみたいと思います。

研究内容について

1年以上の競技歴があり、過去に試合経験のある、健常男性80名 平均年齢 22.6±4.7歳を対象にした研究です。対象者の属性を「打撃種目(ボクシング・キックボクシング)」「組み技系種目(柔道・レスリング)」に分類しています。

評価方法としては①. 不安尺度の評価 [STAI] ② 情動知能の評価[EQS]を活用しました

評価方法

①不安尺度の評価 [STAI]
自記式質問紙で状態や特性不安を測定して点数が高いほど不安要素が高い傾向

②情動知能の評価[EQS]
自記式質問紙で情動知能を測定します。項目として「自己対応」「対人対応」「状況対応」の3つの領域ごとに評価して、点数が高いほどその領域の情動知能に関する性質が高いことを示します

結果としてSTAI項目(不安尺度)では競技種目間における差はあまり認められなかったが、全競技属性において状態不安・特性不安の得点が基準値に比べて高い傾向でした。健常男性の状態不安の平均点が36.6点・特性不安の平均点が36.8点に対して全競技とも45〜50点と高値を示します。

一方、EQS項目ではSTAIとは異なり競技間での違いが見られました。
「自己対応」ではボクシングが柔道に比べ有意に高値、キックボクシングが柔道およびレスリングに比べ有意に高値を示しました。
「対人対応」ではボクシングとキックボクシングがレスリングに比べ有意に高値
「状況対応」ではキックボクシングとレスリングが柔道に比べて有意に高値を示し
打撃群は「自己対応」高く、組み技群は「対人対応」が高い傾向となりました。以上の研究結果から各属性での評価での有意差の原因を自身の経験則も含めて考察してみたいと思います。

考察

今回の評価から打撃群・組み技群において、不安尺度では競技間での有意差は見られなかったが、全体的な平均値として不安要素が高値を示しました。この理由として試合での勝ち負けだけでなく、怪我のリスクが高い格闘技では不安感や緊張感が高い事が原因だど考えられます。

今回の研究では健常者と比較していて不安要素が高値を示していました。健常者と比べると日常から緊張感のある生活をしている為、高値を示すのは仕方がありません。その為、他競技との有意差を比較することが、格闘技における不安尺度の評価材料になるので探してみたいと思います。

不安尺度では健常者と比較では有意差はありましたが、属性間では有意差が見られませんでした。ですが、「自己対応」と「対人対応」に関しては2つの属性で違いがみられました。打撃群が「自己対応」能力が高値を示すのは基本的には個人種目であることと、試合前の減量が組み技と比べ重要になる事が考えられます。組み技群よりも個人での練習や取り組みが必要な要素が高く、自己対応能力が身に付きます。

一方、組み技群では対人での練習が個人競技よりも必要になってきます。また、打撃群よりも団体戦の意識が高い側面があり「対人対応」のスキルがより重要だと考えられます。格闘技でも打撃系・組み技系で精神的特性に違いがあることを理解するのは重要だと思われます。

以上の研究結果から、格闘技選手は競技種目に関わらず精神的に不安を抱えやすい傾向で、打撃系・組み技系で情動知能に関する感情の得意な領域が異なるため、それぞれの群で高める能力を変化させる必要があると感じました。

参考文献:格闘技選手の精神的特性に関する研究:中村 浩一・兒玉 隆之・向野 義人

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